柔道では、体の小さい者、つまり身長が低い者が勝つと言われてきました。
確かに、昔の映画や漫画を見ると、体の小さな者が大男を相手に戦い、みごとに投げて勝つという姿に皆魅了されていたこともありました。
しかし、これはあくまで映画や漫画の世界の話であって、実際にはありえないだろうと思われていますが、柔道が編み出された頃から大きい者に勝つことはあったようです。
昔の柔道の試合を写したビデオを見ると、大きな人が小さな人に対し技を掛けるが掛からず、逆に大きな人間が簡単に投げられているのを見たことがあります。
嘉納治五郎先生や三船久三先生などの回顧録にも記されていますが、やはり本当のことだったようです。
今では逆転しているのか?
今では、そんなことはあり得ないとばかりに、全日本選手権での体重無差別でも、100キロを超える大きな選手が毎年当たり前のように優勝しています。
昔の映像には、特にどのような状況だったのかなどは写っていませんが、大きな人を投げていたのは間違いが無いようです。
では、今と昔の人では何が違うのか?
一つにパワーの違いがあると考えられます。
一般的に体重が重いほど筋肉量が多くなる傾向にあり、比例して力が大きくなると言うことで、現代人の栄養状況が良くなり体が大きくなった。
これにより昔のように体は大きくても、筋肉量が少なかったという状況とは一変しており、パワーが付き小さい者を容易く投げられるようになったと考えられる。
もう一つは、身体能力の発達が挙げられます。
昔の身長が高い人は、運動神経の発達が劣っている印象がありました。
身長が高いだけで、動きが少し遅かったり、反応が悪かったりと運動神経が良くなかったということです。
よく例え話で、”ウドの大木”と言うのを聞いたことがあるかと思いますが、身長ばかり高く役に立たない人を例えたものです。
最近では、身長が高くなっても運動神経がきちんとするようになり、小さい人とそん色なく動くことが出来るようになったと考えられます。
小さい人は大きい人に勝てないのか
確かに現代では、昔の小さい者が大きいものに勝つ、という理論は通用しないのかもしれません。
でも、先生から教わった話の中に、小さい者は俊敏な動きでは、やはり有利であるというものがありました。
大きい人がパワーで小さい者をねじ伏せるのに対し、小さい者は動きで翻弄し相手にペースを掴ませないというやり方です。
確かに大きい人に対してパワーでは勝てず、殆ど投げられっぱなしという時期もあると思います。
自分でイメージする様に動けた時には驚くほど投げられず、相手を手玉に取れることになります。
大きな人に対しての苦手意識というのもあり、目の前にすると萎縮して普段の自分が出せないということも十分に考えられます。
小さいなりの考え方で練習すれば勝てるはずだと思います。