柔道には、空気投げと呼ばれる投げ技があります。
一般的な投げ技の中でも珍しく、殆ど力を必要とせず、合気道のような感覚で投げる技になります。
足も特に払ったり引っ掛けたりせず、腕も引き手と釣り手で少し力を入れるだけですが、豪快に相手は吹っ飛んでいくほどです。
まるでワイヤーアクションを使ったカンフー映画のように、飛んでいくのでちょっと不思議な気持ちになります。
別名隅落としとか、真空投げなどとも呼ばれ、諸説ありますが、三船久蔵先生が編み出した技をこう呼びます。
因みに、最近試合で使った例として、シドニーオリンピック60キロ以下級決勝で、野村忠宏さんが韓国の選手にこの技を使っていますが、秒殺で仕留めています。
では、具体的な空気投げのやり方を説明しましょう。
空気投げの具体的な掛け方
始めにお断りしておきますが、三船先生のオリジナルは両袖を掴みますが、現在の試合や乱取りに準じて袖と襟を掴んだ状態で説明いたします。
右組み(引き手:左腕、釣り手:右腕)の場合での説明になりますが、まず、いつものように相手と対峙し、組み合います。
次に、相手と組み合ったまま自分の後ろ方向へ移動します。
相手も一緒に移動することになりますが、相手が足を前に出し移動した際に少し体が上に持ち上がることになります。
この重心が少し上がった所を見計らって、自分の体を前に出し、引き手を左横方向へ引き、釣り手を相手の左横斜め上方向に押すようにします。
こうすると、相手の体が浮くことになり、加えて釣り手を使い相手の体を空中で回転させる様にすると、横方向に飛んでいきます。
三船先生のオリジナルは両袖を掴むため、より浮き上がりますが、釣り手を襟にしても同様に空気投げが可能となります。
力が要らない訳
この技の最大の特徴は、腕のみで相手を投げている部分であり、足を引っ掛けたり払ったりしていないところです。
力を入れるタイミングとしては、相手の重心が上がった時を狙います。
その重心の上がりに合わせて引き手と釣り手を使い、体ごと預け、一気に相手の斜め後ろ方向に力を入れます。
そのため相手の体は、後ろにのけぞるような形になり、空中でくるりと回転するように飛んでいくことになります。
相手が踏ん張れない状態になったところを狙って投げるため、崩しとタイミングが重要になってきます。
この技は崩しが完璧に出来た末に成功するので力が殆ど必要ありません。
かえって、やみくもに力任せに掛けると、逆に成功する確率が下がることになります。
柔道の基本として、崩しと言う考え方がありますので、目をつぶっても重心移動が体感できるようにしておきましょう。