柔道の基本に崩しという考えがありますが、これが完璧に出来れば柔道の投げ技は、半分マスターしたと言っても過言ではありません。
よく先生方の指導で、技に入る前には相手を崩せ、と言う言葉を良く聞くと思います。
石のように動かない人を力で動かそうとするのは大変ですが、崩した後の人なら極端な言い方をすれば片手で投げることが出来ます。
柔道の技に、空気投げ、というものがありますが、これは相手を崩し、腕だけで相手を投げるやり方です。
しかも投げる瞬間は、力が殆ど必要無いので投げられる方も、見ている方もびっくりします。
このように、崩しを使えば柔道の極意である、柔よく剛を制す、を具現化することが出来ます。
崩しの種類
崩しとは、動きの中で引き手や釣り手など使い、相手の重心を移動させることとなります。
崩す方向は8方向あり、前後左右の4方向に加え、左右の斜め前、左右の斜め後ろの4方向があります。
相手を移動させながら、引き手を引いたり、釣り手を引いたり押したりすることで相手の体勢を崩すことが可能になります。
例えば相手と組み、一緒に動いてもらうようにした場合、相手の足が着地した瞬間に合わせて引き手を引いてみると、相手はつんのめるような形になります。
この状態が、相手を崩せた、状態と言うことになりますが、ちょっと力が必要だったな、と感じることがあります。
これは完全に崩せていない状態と言うことになり、研究が必要になります。
より力を入れないようにするには、相手の重心が移動する方向に合わせて、引いたり押したりしてアシストする必要があります。
中学校や高校の物理でベクトルというのを習うと思います。
相手の移動する速度を増したい場合、重心移動の方向を合わせて力を加える必要がありますが、方向が合えば、驚くほど力が要りません。
逆に相手の重心移動と反対方向に力を入れれば、相手の動きが止まってしまい、崩しが失敗したことになります。
力の方向や大きさは目で見えませんが、なるべくイメージするようにしてみると崩しが理解出来ると思います。
崩し方の指導方法
柔道の指導で、技の掛け方は得意であるが、崩しに関して指導することは難しいと言う場合があります。
それは前述したように、力は目に見えないからです。
技の掛け方は目に見えるので、相手にも理解しやすいですが、崩しの場合力がこうなってああなってと説明しても見えないため、相手には理解しにくくなります。
これが基本として崩しを教えるのが難しくなり、結果として省いてしまい、技の指導に入ることが多い理由の一つになります。
崩しを理解していない内に、技を掛ける練習をしても、崩しが出来ないため力任せになったり動きが滅茶苦茶になったりと、弊害のほうが大きくなります。
指導をする際には、目に見えない力を見えるように工夫することで、理解度も増しますし、上達も速いと思います。
ベクトルという言葉が分からない小学生などに対しては、動きを指で示すだけでもだいぶ違ってきます。
柔道は、力があればいいということではないことを、指導いただけたらと思います。